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サタニストによる映画評『暗黒映画入門 悪魔が憐れむ歌 』レビュー

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『暗黒映画入門 悪魔が憐れむ歌』 著:高橋 ヨシキ 刊:筑摩書房

                 発売日:2021/2/13 ジャンル:映画紹介 国:日本

 

我々は絶望のただ中で悲嘆にくれて過ごすしかないのだろうか?

まったく逆だ。

そうではなく、絶望と恐怖という新しい友人を得たと思えばいいのである。

 

こんな人にお勧め!

・おどろおどろしい映画を観たいと思ってる方

 

内容

残酷と暴力、恐怖と暗黒、悪と未来…映画という科学的メディアに描かれた野蛮な人類の愚行!

 

レビュー

本書は、アート・ディレクター、映画ライター、デザイナー、悪魔主義者(それって職業なんでしょうか…?)である、高橋ヨシキ氏が行った映画レビューを、一冊の本に纏めた本であります。

高橋氏は、全体主義を憎悪し、軽蔑しきっています。なので、社会に蔓延する「こうあるべき」「こうするべき」という風潮を、真っ向から否定しています。なので、彼は昨今世に蔓延する、ポリティカル・コレクトネスに対しても、否定的な見解を本書の中で述べています。こういった人物に対して、思わず眉を顰めてしまう様な真面目な人は、本書を読んではいけないと思います。きっと怒り心頭になる事間違いなしですから。

といっても、彼はポリコレそのものを否定している訳ではありません。あくまで「人間の醜い部分を、真っ向から書いてみせた作品があってもいいではないか。ポリコレを重視し過ぎると、そういった作品が作りにくくなってしまうから(彼は例として、ハン・ソロを挙げています)一つの思想を創作内にまで求めるのは止めるべきなのではないのか?」という意見を、本書の中で投げかけているのです。

そんな彼がお勧めする映画は、どれもこれも一筋縄ではいかないものばかり。『世界残酷物語』を撮影したグァルティエロ・ヤコペッティに対する賛辞から始まり、いわゆるB級映画にジャンル分けされるようなホラー映画、評論家から「訳が分からない作品」と酷評された、日本のポップ・カルチャーに対する憧憬を前面に押し出した映画『エンジェル・ウォーズ』など、真っ当な(という言い方が正しいのかどうかは分かりませんが)感性の持ち主ならば、思わず首を捻ってしまう様な作品群が、猛プッシュされています。きっと、高橋氏はとても独特な視点で世の中を眺めている方なのだと思います。しかし、自分の好きな物を、声だかに「面白い!」と叫ぶ方に、私は尊敬の念を抱かずにはいられません。世の中には、「世間で持て囃されている作品=面白い作品」という考えを持っている人の割合は、相当数存在する気がしますが、自分の好きな物を素直に好きだと言えるような人は、意外と少ないのではないか?という感想を、私は前から持っていたからです。しかし、後者のような人が全くいなくなってしまったら、世の中はとてつもなく退屈になってしまうのではないでしょうか?高橋氏のような人がいるから、世の中は面白いのです。

という訳で、今回のレビューを終えます。とても面白く、個性的な映画評が続き、読んでいて全く飽きさせない本です。是非読んでみて下さい。

 

悪魔が憐れむ歌 ――暗黒映画入門 (ちくま文庫)