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本物の犯罪者が描き出した世界『ストレートタイム』レビュー

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『ストレートタイム』 著:エドワード・バンカー 訳:沢川 進 刊:角川書店

           発売日:1998/9/1(オリジナル版は1973年) 

           ジャンル:ハードボイルド 国:アメリ

 

おれは金を数えた。百八十五ドル。終身刑を宣せられる危険を冒したのにそんなはした金でしかなかったので、おれは泣きたくなった。なんたる人生だ。それに、心が痛んだ。おれは虐げられた者から盗んだのだ。

 

こんな人にお勧め!

・本格派のハードボイルド作品、若しくはノワール作品を読みたいと思ってる方

・犯罪者の心理状態を知りたいと思ってる方

 

内容

十二歳にしてマリファナ、十六歳にしてヘロイン。泥棒、詐欺、武装強盗、ポン引き…悪の限りを尽くし、少年時代から拘置所と貧民窟を行き来していたマックス。明日、八年の刑務所暮らしから晴れて仮釈放される。が、彼の心を支配していたのは、不安と憂鬱だった。いまさら堅気になろうとは思わなかったが、悪事には二度と手を染めたくなかった。が、食うためには金が要る。闇の仕事ならいくらでもある。まともな職が欲しかった。屈辱に耐え、悪の誘惑も断ち、這い上がろうとする前科者に、娑婆は容赦なかった…。圧倒的なリアル。ロマン・ノワール幻の傑作。

 

映像化作品

1978年に映画化されているようです。

 

レビュー

少年時代から犯罪に手を染め続け、何度も少年院と監獄を行き来した男が、獄中で書いた小説…そんな紹介をされてしまったら、何としでもその本を読んでみたいと思うのは、きっと私だけではないでしょう。

本作『ストレートタイム』は、エドワード・バンカーという元犯罪者の小説家が書いた作品であります。バンカーの紹介は、以前他の記事で行っているので、彼がどういう人物なのか知りたい方は、そちらの記事を見て下さい。↓

 

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 本作は『ドッグ・イート・ドッグ』よりもさらにリアルで、容赦ないです。まるで冷たい刃物をつきつけられているような、そんな感覚を読者は本書を読む事で味わう事が出来ます。

バンカーの文体は荒っぽく淡々としていると同時に、非常に格調高く、文学的です。何故そんな相克する二つの要素が、一つの作品の中に同居出来ているのかは分かりませんが、まるで彼自身のアンビバレンスな内面そのものを象徴しているのかのようで、非常に面白いです。

彼は自伝で「ドストエフスキー罪と罰を読めば、その辺にある心理学の本を読むよりも深く、犯罪者の心を知れる」というような事を言っていましたが、『罪と罰』を読むよりも、本作を読んだ方がもっと詳細に、犯罪を繰り返してしまう人物の心を知れるようになるような気さえします。実際、映画監督のクエンティン・タランティーノは、『レザボア・ドッグス』を創作するにあたって、本作を何度も読み返したらしいです。

しかし、ラストに関しては少し私は「うん?」と思ってしまいました。というのも、少々ネタバレになってしまいますが、主人公は最後、割と救いのあるラストを迎えるのです。シビアで冷徹な、リアリティのある作品を書きたかったのなら、きっちり主人公を破滅させた方が良かったのではないのでしょうか。流石の無法者も、自分自身の分身とも言える主人公を破滅させるのは、良心が痛んだのでしょうか?

処女作という事もあり、粗削りな作品である事は否めませんが、非常に面白い、独特の味のある本である事は確かです。是非読んでみて下さい。

 

 

 

Straight Time [DVD]

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  • 発売日: 2015/09/01
  • メディア: DVD