『悪党に粛清を』 監督:クリスチャン・レヴリング
脚本:クリスチャン・レヴリング
アナス・トマス・イェンセン
公開:フランス 2014年5月17日(カンヌ)
デンマーク 2014年5月22日
日本 2015年6月27日
ジャンル:西部劇 国:デンマーク・イギリス・南アフリカ共和国
神はなぜ、復讐という業を背負わせたのか
こんな人にお勧め!
・シビアな世界観の物語が好きな人
・西部劇が好きな人
・復讐劇が好きな人
・アメリカ以外の国で作られた西部劇が観たい人
内容
1870年代アメリカ。元兵士のジョンは、敗戦で荒れたデンマークから新天地アメリカへと旅立つ。7年後、事業も軌道に乗り妻子を呼び寄せ再会を喜びあったのもの束の間、目の前で妻子を殺されてしまう。怒りのあまり犯人を見つけ出し射殺したが、犯人はこの辺り一帯を支配する、悪名高いデラルー大佐の弟だったこととから彼の怒りを買ってしまう。マッツ・ミケルセン主演によるウェスタン・ノワール・アクション。
レビュー
本作は、世にも珍しいデンマーク製の西部劇です。というより、そもそも最近では西部劇自体あまり作られていませんが。
『許されざる者』というクリント・イーストウッドが監督した映画がありますが、その映画は「最後の西部劇」という二つ名で呼ばれる事もあります。何故そのように呼ばれているのかというと、作品の完成度があまりも高く、西部劇を作る上で求められるハードルが相当高くなってしまった、という理由に加え、そもそも西部劇は現在では求められていない物語であるからです。
というのも、西部劇は華やかなアメリカン・ドリームの象徴みたいな存在だからです。しかし現在の世は皆さんご存知の通り、貧富の差がどんどん拡大していっていますから、そんな荒唐無稽な話を、鑑賞者はすんなりと信じてくれません。しかも、昔は映画を鑑賞するのは殆ど白人だけでしたが、現在ではあらゆる人種が映画を鑑賞します。なので、白人しか登場しない西部劇は(もっとも、現実の西部開拓時代には、あらゆる人種のガンマンがいたらしいですが)いまいち受けが悪いのです。
という訳で、敬遠されがちな西部劇を、クリスチャン・レヴリング監督は見事に現代に復活させました。しかも、単に昔の時代によく作られていた「古き良き西部劇」を作った訳ではなく、きちんと今の時代に沿った物語にアップデートされています。
しかし、その「古き良き西部劇」が大好きな人にとっては、本作はあまり面白いとは思えない作品だと思います。どちらかというと、マカロニ・ウエスタンが好きな人の方が向いているのかな?この映画、とにかく残酷な場面が多いですから。そういう描写が好きな人向けの映画です。(といっても、直接的な描写はそれほど多くはありませんが)あと個人的に気になったのが、主人公あんまり活躍しないな…という事でした。まあ、それがリアリティある作風を作り出すのに一役買ってる為、一概に批判するのもどうかとは思いますが。
という訳で、今回のレビューを終えます。気になった人は、是非一度鑑賞してみて下さい。