『怒りの葡萄』 著:ジョン・スタインベック 訳:伏見 威蕃 刊:新潮社
発売日:2015/9/27(1939年) ジャンル:文学 国:アメリカ
人間は自分が育てなかったものを食べ、パンとの結びつきはもはや失われている。土は鉄に踏みしだかれて作物を生み出し、しだいに死ぬ。なぜなら、土はもう愛されることも憎まれることもなく、祈りも呪いも持たないからだ。
内容
米国オクラホマ州を激しい砂嵐が襲い、先祖が血と汗で開拓した農地は耕作不可能となった。大銀行に土地を奪われた農民たちは、トラックに家財を積み、故郷を捨てて、“乳と蜜が流れる”新天地カリフォルニアを目指したが…。ジョード一家に焦点をあて、1930年代のアメリカ大恐慌期に、苦境を切り抜けようとする情愛深い家族の姿を描いた、ノーベル文学賞作家による不朽の名作。
受賞歴
1960年にスタインベックが受賞したノーベル文学賞も、本作が受賞理由になっています。
レビュー
本作は、アメリカ文学の金字塔的な作品です。
私が本作に興味を持った理由は、テレビドラマ『ウォーキング・デッド』で、登場人物の一人が本作を会話のネタに出したシーンがあったからです。とまあこのように、本作は今もなお、後世の作品(主にアメリカ産)に多大な影響を与えています。
本作が支持を集め続ける理由は、本作が不屈のアメリカン・スピリットを、見事に描き出しているからなのでしょう。現実はシビアで、乾ききっていますが、それでもなお諦めずに藻掻く人間の姿に、読者は共感し、感動を覚えます。
…とかなんとか言っといてなんですが、正直私は本作をあまり楽しめませんでした。なんというか、あまりにもリアル過ぎるというか生々し過ぎるというか、乾き過ぎというか泥臭いというかなんというか…。フィクションなんだから、もう少し読者に夢を見せてくれたっていいんじゃない?と読んでいる最中に、私は思ってしまいました。
多分、本作はアメリカ人しか面白いと思えない作品なのだと思います。音楽で喩えるとカントリーの様な…。
しかし、アメリカ人がどのような思想を持っているのか。また、アメリカン・スピリットの一端を、本作から見いだす事が出来たので、決して無駄な読書体験では無かったと思います。本作の存在を念頭に入れる事によって、アメリカ産の映画や小説をもっと深く理解出来るようになったと筈です。多分。
という訳で、今回のレビューを終えます。名作ではあるので、読んでおいても損は無いと思います。まあでも、娯楽性は無いですね。