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現代の私小説『推し、燃ゆ』レビュー

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『推し、燃ゆ』 著:宇佐見りん 刊:河出書房新社 

        発売日:2020/9/10 ジャンル:文学 国:日本

 

やめてくれ、何度も、何度も思った。何に対してかはわからない。やめてくれ、あたしから背骨を、奪わないでくれ。推しがいなくなったらあたしは本当に、生きていけなくなる、あたしはあたしをあたしだと認められなくなる。p112より抜粋

 

内容

推しが炎上した。ままならない人生を引きずり、祈るように推しを推す。そんなある日、推しがファンを殴った。

 

レビュー

本書は、若干21歳の若さで芥川賞を受賞した、宇佐見りん氏の作品です。各界でセンセーショナルを巻き起こしているので、きっと本書を読んだ、或いはこれから本書を読む予定の人も多いと思います。

本書は「生きづらさを感じる現代の若者のリアル」というような文句で、紹介されている事が多い気がします。その評論通り、本書の主人公は、日常生活がうまくいっていない現代の女子高生です。きっと、本書の主人公に共感を覚える若者は多いと思います。文体もそれほど難しくないので、普段本を読まない若い人にも、お勧めできる本です。

しかしその反面、ある程度歳が上の方や、それこそ芥川龍之介とか川端康成とか三島由紀夫とかを読んだ事がある人にとっては、退屈極まりない作品だと思います。題材も題名通り「推しがファンの女の子を殴った事で動揺するイチファン」というどうでもいいといったらなんですが、ありきたりというかよくある話というか俗物的というかなんというか…なものなので、「こんな本読んだところで何も得られないし、芥川賞を受賞するのに値しない作品」みたいな感想を抱いてしまう人が出てくるのも、ある意味しょうがないのかなぁ。とも思います。私は少し前に本好きな50歳くらいの男性と会話する機会があり、本の話で盛り上がったのですが、「最近の本は文学作品という名目であっても、ポップというかライト過ぎて…」みたいな事を仰っていました。名前は出していませんでしたが、彼はきっと本書の事を指していたのでしょう。

しかしそれでもなお、本書は読むべき価値ある本だと思います。現代の若者の心境を正確にデッサンしているので、現代の若者の心情と、ひいては現代社会の空気感を深く知る事が出来ますし、まあ身も蓋も無い言い方ですが、話題になっている本なので、本書に関する話題を出せば、ある程度は会話が盛り上がる…かもしれません。

という訳で、今回のレビューを終えます。個人的には結構楽しく読む事が出来ました。過去の名作を読むのも勿論素晴らしい事ですが、現代に流行っている本を読んでみるのも、きっと良い読書体験になると思います。是非読んでみて下さい。

 

推し、燃ゆ

推し、燃ゆ