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先進国家ナチスドイツ!『ナチスの発明』レビュー

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ナチスの発明』 著:武田 知弘 刊:彩図社 

         発売日:2011/9/20(オリジナル版は2006年12月)

         ジャンル:政治 国:日本

 

内容

ロケット、ジェット機、ヘリコプター、大衆車、聖火リレー…あの世紀の発明品、開発したのは「ナチス」だった。知られざるナチスの真実。

 

レビュー

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャーという映画があります。少しその映画の内容をネタバレをしてしまうと、アメリカの中枢に、ナチスの意志が紛れ込んでいた。という映画です。

いやいや、そんなアホな…。とその映画を観終わった後、私は思わずその荒唐無稽なストーリーに失笑してしまいましたが、本書を読了後は、「あの映画の内容って、それほどおかしな話でも無かったんだな…」と思い直しました。

本書は、ナチスドイツが残した功績を、客観的な視点で淡々と述べた本であります。極悪非道なイメージがつきまとうナチスですが(というか実際極悪非道な行いを数多くしていましたが)その一方で、実は現代社会があるのは、ナチスのお陰と言って良い程、有益な発明を残しているのです。

本書を執筆した武田氏は、負の面ばかりでなく、ナチスが残した発明を正しく後世に伝える必要があるのではないか?という想いで、本書を執筆なさったらしいです。といっても、彼は決してナチスを賛美している訳ではありません。何故当時のドイツ国民は、ナチスという組織を支持したのか?その理由をきちんと知る事が出来なければ、今後新たな独裁政権の到来を許してしまう事になるのかもしれません。だからこそ、私達はナチスが作り出した偉大な発明を、改めて知る必要があるのです。

ナチスが作り出した発明には、以下の物があります。

・大衆車

聖火リレー

源泉徴収

・当時の社会にとって、必要不可欠であった情報源である、ラジオを使った宣伝方法

・女性の社会進出

アウトバーン(高速道路)

・長期の有給休暇

まだまだ、他にも沢山ありますが、この辺で止めておきます。しかし、どれも今の社会でも使用されてる物ばかりですね。(長期の有給休暇は、現代日本にはありませんが…労働者の権利に関しては、現代日本よりもナチスの方が人道的という、なんとも悲しい結果になってしまっています…)

中でも私が驚いたのが、女性の積極的な登用です。比較的近年になって、やっと女性の権利拡充が進んだ印象を、私は持っていたのですが、ナチスが既に実現していたとは…。実際、女性初のヘリコプター、ロケット戦闘機、ジェット戦闘機搭乗者であるハンナ・ライチュや、ナチス党大会の記録映画である『意志の勝利』を撮ったレニ・リーフェンシュタールは女性です。

正直に言うと、「これだけ制度が充実されたのなら、当時ナチスを支持した人の気持ちも分からないでもないな」という感想を、私は抱いてしまいました。

大衆という存在は、いつの時代も自分達の利益を第一に尊重してくれる政党やリーダーの出現を望んでいます。たとえその政党やリーダーが、ジェノサイドや非人道的な行いを繰り返す様になっても、次第にそれらの行為に対する抵抗感は失せ、彼等を支持しようとする決意だけは、どんどん固くなってゆくのでしょう。ヒトラーは、大衆のその真理をよく理解していた上で、第三帝国を作り上げたのです。恐ろしい話です。背筋が凍った様な感覚を、私は本書を読み進めている内に覚えました。

そしてそれと同時に私は、「もし閉塞感のある今の日本で、ヒトラーナチスのような存在が出現してしまったら、どうなってしまうのだろう?」という疑問を浮かべました。所詮仮定の話なので、なんともいえないですが、やはり彼等を支持するグループの規模の方が、彼等を排斥しようとするグループよりも、大きくなってしまうような気がしてなりません。そして、民主主義という仕組みを使っている以上、彼等が政権をとってしまう可能性は十二分にあります。(現に、ナチスは選挙という合法的な手段を用いて、政権を樹立させています)

色々と後味の悪い部分を残す本ではありますが、先が見えない混迷の時代にある今だからこそ、読んでみる価値のある名著だと思います。是非読んでみて下さい。

 

ナチスの発明

ナチスの発明

  • 作者:武田 知弘
  • 発売日: 2011/09/20
  • メディア: 文庫