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現代社会を予知した名著『文明の衝突』レビュー

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文明の衝突』 著:サミュエル・ハンチントン  訳:鈴木 主税 刊:集英社 

        発売日:2017/8/22(オリジナル版は1996年) 

        ジャンル:国際情勢 国:アメリ

 

内容

世界はどこへと向かうのか?各地で多発する民族紛争と文明間の軋轢の本質とは何か?著者は世界を、西欧・中国・日本・イスラムヒンドゥー・スラブ・ラテンアメリカ・アフリカの八つの文明に分け、冷戦終結後の様々な紛争をこれら異文明間の衝突ととらえた。各界に大きな衝撃を与え、侃々諤々の大議論を呼んだハンチントン仮説のインパクトは、21世紀の今も全く色褪せることがない。

 

レビュー

本書、『文明の衝突』は、1996年に出版され、当時本国アメリカを中心に、大きな議論を呼び起こしました。

本書の内容を要約すると、「将来的には西欧中心の世界観は崩れ、少数民族民族意識が強まっていく。また、アジアは今後西欧の後追いを止め、独自の文化を形成するようになり、その影響力をますます伸ばしていく。イスラムの文明圏に属する国々も、対西欧の価値観を強めていくようになる。本書のタイトル通り、近い将来に、文明の衝突が勃発するようになる」です。

2021年現在、本当にハンチントン氏が指摘したような世界観が訪れています。本書はまるで予言書です。

自分は1998年生まれなのでよく分からないのですが、冷戦の終結が起こった頃は、「これからは世界も平和になっていくのではないか」というような楽観的な考えを述べる人も多かったようですね。実際、大国同士の争いはなくなりました。しかし、その反面にこれまで抑えつけられていた諸国の民族意識は活発化し、911を始めとするテロ行為が、先進国でも起こるようになってしまいました。

しかも、それだけに終わらず、これまで世界の警察と呼ばれていたアメリカの影響力も、中国の台頭によって、かなり落ちてしまいました。最早、アメリカがくしゃみをすれば、他の国は風邪をひく。なんていう時代ではなくなってしまっているのです。事実、2020年には、多くの国がGDP成長率を落としている中、中国だけはどういう訳だが経済成長を遂げています。

私が高校生の頃は、「これからの世界は国際協調路線をとるようになる。その為、ナショナリズムは過去の遺物と化す」みたいな事を宣っていた学者もちらほらと存在していたような気がしますが、むしろ現在、世界中でナショナリズムは活発化しています。加えて、デモや暴動も世界中で頻発しています。

うーむ。ハンチントン氏には、超能力みたいなものがあって、未来を予知する事が出来たのでしょうか?私は本書を読書中に、思わずそんな疑問を真剣に浮かべてしまいました。

しかし、「現在(1996年)の日本では脱欧米感情が高まっているから、将来的には日本もアメリカの言う事を聞かなくなる」という趣旨の内容は、間違っている気がします。というかむしろ、現在では1996年の頃より、日本はさらにべったりアメリカにすりよろうとしているような気がしますが…。まあ、どちらにしても日本が難しいかじ取りを迫られてるのは、否定の仕様がないとは思います。

本書は1996年に執筆されている為、少々「ん?それ違くない?」と首を傾げてしまう部分もありますが、それでも本書に書かれている大筋の内容は、現代の世の中では殆ど実現されてしまっています。なので、本書『文明の衝突』は、今からでも読む価値は十分にあり、むしろその価値をどんどん高めている。といっても、なんら差支えは無いと思います。是非一度、本書を読んでみて下さい。

 

文明の衝突 上 (集英社文庫)

文明の衝突 上 (集英社文庫)

 

 

 

文明の衝突 下 (集英社文庫)

文明の衝突 下 (集英社文庫)