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言語を絶する感動『夜と霧』レビュー

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『夜と霧』 著:ヴィクトール・フランクル 訳:池田 香代子 刊:みすず書房

      発売日:2002/11/6(オリジナル版は1946年) ジャンル:ノンフィクション

      国:オーストリア

 

内容

心理学者、強制収容所を体験する-。飾りのないこの原題から、永遠のロングセラーは生まれた。原著の改訂版である1977年版にもとづき、新たな訳者で新編集。人間の偉大と悲惨をあますところなく描く。

 

レビュー

人間は何事にも慣れる存在である。ロシアの文豪である、フョードル・ドストエフスキーの言葉です。たとえ極限状態に置かれた人間であっても、どういう訳だか、その定義はあてはまってしまうようです。

本書は、実際にナチス強制収容所に収監された経験がある、ヴィクトール・フランクルが残した名著です。言語を絶する感動作として、『アンネの日記』と共に、世界中で読み継がれています。

しかし感動作といっても、文体は結構硬質ですし、終始淡々とした調子でその物語は綴られています。日本人の戦争体験を元にした作品や伝記は、かなりウィットな調子に書かれる事が多いですが、本書にそういう要素を期待すると、まず間違いなく肩透かしを食らうと思います。つまり、本書はお涙頂戴の作品ではなく、極限状態下での生活を正確にデッサンした、レポートのようなものだと思って下さい。

ノンフィクションという事もあって、本書はかなり生々しいです。本書を読めば、極限状況下に置かれた人間が、どのような言動をするようになるのか、知る事が出来ます。なので、組織のマネジメントをしたいと思ってる方や、創作活動をしたいと思ってる人に対しても、本書をお勧めできます。

少し箇条書きで、極限状態下の人間が、どのような行動をとるのか、書いてみたいと思います。

・飢餓状態になると、性欲は殆どなくなり、食べ物の事しか考えられなくなる。事実、      収容所内に男色行為は存在しなかった。

・看守の全員が悪人であった訳ではない。中には、隠れて薬等を囚人に分けてくれた者もいた。

・その一方、文字通り人を人だと思わない人間もいた。人はサディスティックな欲望を内に秘めており、しかもそういった行為に対して、次第に慣れていく。なので、サディスティックな行為はどんどんエスカレートしていった。結局、「良い民族」や「悪い民族」など存在しない。結局のところ善人と悪人の区別は、個人単位に依る。

・「クリスマスまでには帰れるはずだ」といったような、根拠の無い淡い期待を抱いていた人間は、精神的に脆い。なので、病気にかかったりすると、すぐに死んでしまう。

・また、精神的に弱い人間は、すぐに自殺しようとする。

・逆に、人生に生きる目的を見出している人間は、たとえどんな過酷な状況下に置かれても、生き延びようとする。

まだまだ沢山ありますが、この辺で止めておきます。本書は情報の塊みたいな本です。必ず有意義な読書体験になると断言出来るので、是非読んでみて下さい。

 

夜と霧 新版

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