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バッタのばっか!『バッタを倒しにアフリカへ』レビュー

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『バッタを倒しにアフリカへ』 著:前野ウルド浩太郎  刊:光文社

               発売日:2017/5/17 ジャンル:昆虫学 国:日本

 

内容

一発逆転を狙ってモーリタニアに旅立った“バッタ博士"の記録

「大学院を出て、ポスドクとして研究室にいた頃は、安定した職もなく、常に不安に苛まれていました。博識でもなく、誇れるような実績もない。友達と楽しく飲んでいても、トイレにたったときに研究の手を止めた罪悪感に襲われる日々でした。なので、一発逆転を狙おうと」

日本ではスーパーで売っているタコの産地として知られるモーリタニア。バッタ研究者だった前野さんは、思い立って一路モーリタニアへ。このたび、かの地で経験した一部始終を記した『バッタを倒しにアフリカへ』を出版した。

サバクトビバッタはアフリカで数年に1度大発生し、農作物に大きな被害を与えています。私はこのバッタの研究者なのに、人工的な研究室で飼育実験ばかりしており、野生の姿を見たことがなかった。自然界でのバッタを観察したいという気持ちもありました」

本書は、現地の言葉(フランス語)もわからずに飛び込んだ前野さんの冒険の記録でもある。

まえのうるどこうたろう/1980年秋田県生まれ。昆虫学者(通称バッタ博士)。弘前大学卒、神戸大学大学院、京都大学白眉センター特定助教などを経て、現在はつくば市国際農林水産業研究センター研究員。他著に『孤独なバッタが群れるとき』がある。写真:著者提供

渡航ぎりぎりまで、研究室でバッタを育てていて、フランス語の勉強を後回しにしちゃったんです。もう、とにかく現地に入れさえすれば、なんとかなるという気持ちでしたね。自分も人見知りではないほうでしたが、モーリタニアの人々は、道ゆく人がお互いに話しかける人懐こい人たちで、笑顔をつくる機会が多かったです。ちょっと分からないことがあっても、とりあえず笑顔で押し切りました」

世界的にみても、野生のサバクトビバッタの生態観察は、約40年ぶりになると前野さんは語る。活動が認められ、モーリタニアの高貴なミドルネーム「ウルド(〇〇の子孫)」を現地の上司から授かった。

現地にいってからも、なかなか出会えなかったバッタの大群。ついにまみえると、前野さんは長年の夢をかなえるべく、緑の全身タイツに着替えて仁王立ちに。本書のクライマックスだ。

「子どもの頃に、バッタの大群に女性が襲われ、緑色の服が食べられたという記事を読んで、自分もバッタに包まれてみたいと思っていたんです。今回、バッタにはスルーされましたが、なぜ私の衣装が食べられなかったのかも、ちゃんと調べています。アホかと思われるかもしれませんが、この夢を叶えるためにはバッタの食欲や飛翔、そして群れの動きを予測するための様々な研究が必要です。最終的に、私の頭の悪い夢がアフリカをバッタの食害から救うかもしれません」

 

レビュー

コロナ騒動の陰に隠れたせいで、すっかり報道されなくなってしまいましたが、2020年に、バッタがアフリカの各地に大量発生し、様々な問題を引き起こしました。

蝗害は日本ではあまり発生した例がないらしいですが、他の国ではそれこそパンデミックと並んで、大昔から恐れられていたらしいです。

本書は、日本人でありながらわざわざアフリカに赴き、異国の地でバットと格闘する男の、汗と涙の物語を纏めた本であります。

(ちなみに、私はバッタ…というか、虫全般が嫌いです。子供の頃は、カブトムシとか素手で捕まえて喜んでいましたが、今では絶対に出来ません。前野氏はバッタを美しいと言っていますが…一体あの気色悪い生物のどこが美しいのでしょう?ぶっちゃけ、全く理解出来ません)

本書を執筆した前野ウルド浩太郎氏は(ウルドというのは、モーリタニアの称号の様な物らしいです)幼い頃ファーブルに憧れ(ちなみに、ファーブルは現地フランスでは全く知られていないらしいです)しまいには、なんとバッタに食べられたいという欲望を持つようになってしまいました。頭おかしいんじゃねーの?いや、なんでもありません…。そんな欲望をもってしまった彼には、昆虫学者になるしか道はありませんでした。しかし、学者という職業は、方々で散々言われている様に、苦労の割には儲からない仕事。しかも専門がバッタとなると、世間で求められている需要なんて殆どありません。

そんな時氏は、アフリカでは現在進行形でバッタが大量発生し、困っているという情報を聞きつけます。「そんなら、アフリカでバッタの研究をすればいいじゃん!」と思いつき、氏は単身アフリカへと渡ります。これが本書のプロローグ部分です。

しかし、アフリカではありとあらゆる種類の苦難が待ち受けていました。子供に恐喝(?)されそうになったり、サソリに刺されたり、危うくテロリストにエンカウントしそうになったり、ぼったくられたり、異常に暑かったり、そもそも肝心のバッタが出てこなかったり、無収入になったり…人生とは上手くいかないものであります。

しかしそれでも、前野氏は諦めません。ひたむきにバッタを追い求めるその雄姿に、我々読者は感動を禁じ得られません。

実際、子供の頃からの夢を追い続けて、バッタの研究を続ける前野氏の周りには、次第に大きな人の輪が作られていきました。やはり、何かに没頭している人間というのは、人を惹きつけるものなのでしょう。

私事ではありますが、私もこのご時世のせいで、やる予定だった事が中々出来ずに、歯痒い思いをしていたので、本書からは大きな勇気を頂きました。自分の好きな事を続けて努力し続ければ、何か道は見えてくるものなのだと思います。人と違った体験をした人というのは、たとえ本人にその気はなくとも、希少価値が高まっていくのでしょう

また、本書の文体は非常にユーモラスで、全く読者を飽きさせません。なので、ぐんぐん読み進める事が出来ます。

とても面白い読書体験をする事が出来ました。しかも、この物語はフィクションでなく、ノンフィクションだというのだから、よけいです。是非、皆様も本書を読んでみて、前田さんの生き様から何かを学んでみて下さい。

でも、個人的にバッタの大群は、生きてる間は絶対お目にかかりたくないです…。あんなのに襲われたら、多分私は発狂してしまうと思います…。