『ハムレット』 著:シェイクスピア 訳:福田 恒存 刊:新潮社
発売日:1967/9/27(1600年頃に書かれたと推定される)
ジャンル:文学 国:イギリス
内容
城に現われた父王の亡霊から、その死因が叔父の計略によるものであるという事実を告げられたデンマークの王子ハムレットは、固い復讐を誓う。道徳的で内向的な彼は、日夜狂気を装い懐疑の憂悶に悩みつつ、ついに復讐を遂げるが自らも毒刃に倒れる―。恋人の変貌に狂死する美しいオフィーリアとの悲恋を織りこみ、数々の名セリフを残したシェイクスピア悲劇の最高傑作である。
映像化作品
1948年、1964年、1969年、1990年、1996年、2000年と、何度も映画化されています。ちなみに、黒澤明監督作品の『悪い奴ほどよく眠る』は、本作を下敷きにしています。中国でも、本作の舞台を中国王朝時代に移した映画『女帝』という作品が作られているようです。
レビュー
本作『ハムレット』は、恐らく、名前は聞いた事があっても、実際に読んだ事がある人間はそう多くは無いであろう作品だと思います。
実際、私は長らくハムレット…というか、シェイクスピアという人物に対して、堅苦しそうなイメージを持っていたので、敬遠して長い間読んでませんでした。
しかし、ある時私は、シェイクスピアを知らなければ、本当の意味で西洋文化を理解し得ないという事実に気が付きます(といっても私は一学生という身分に過ぎないので、所詮趣味の範疇に過ぎないのですが)なので、しょうがないので、まずはシェイクスピア作品の中で、最も高い評価を下されているらしい本作を渋々読み始めました。
そして、読んでみた感想ですが…これが予想外に、とても面白かったのです。やはり、世間一般に名作として認識されている作品は侮ってはいけないのだと、痛感しました。
本作の話の内容は、殺された父親の仇を打つために、仇である叔父に復讐する事を、主人公のハムレットが決意し、苦悩するというものです。要するに、本作は復讐劇なのです。当然ながら、復讐劇が楽し気な作風になる筈も無いので、本作は悲劇になっています。
しかし、ハムレットの復讐劇そのものよりも、恋が破れて発狂してしまう、悲劇のヒロインであるオフィーリアの方が、アーティストのインスピレーションを刺激するようで、あらゆる媒体で、オフィーリアのあらましは引用されまくっています。まあ、野郎よりも少女の方が人気が高い理由は、なんとなく分かる様な気がしますが。
本作が書かれたのは17世紀であり、四世紀も前の、しかも異国の話ですが、今現在もこれだけ本作が支持されている理由は、きっと、古今東西人間の考える事は、それほど大差ないからなのでしょう。シェイクスピアの悲劇は、神が定めた運命的な理由で決したものというより、私欲に塗れた人間による、浅はかな行いが招く結果といったニュアンスがあります。実際、今も昔も、人間はその浅はかな行いによって、自身を破滅に導いてしまうような事が多々起こったりします。その辺の人間臭さが、シェイクスピアが愛好されている理由にる所以でしょう。
という訳で、今回のレビューを終えます。本作はページ数も220と比較的少ないですし、一度は読んでみても損は無いと思います。