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怪奇と論理が彩る殺人事件『夜歩く』レビュー

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『夜歩く』 著:ジョン・ディクスン・カー 刊:和爾 桃子  刊:東京創元社

      発売日:2013/11/29(オリジナル版は1930年) ジャンル:ミステリー 

      国:アメリ

 

内容

パリの予審判事アンリ・バンコランは、剣の名手と名高いサリニー公爵の依頼をうけ、彼と新妻をつけねらう人物から護るために深夜のナイトクラブを訪れる。だが、バンコランと刑事が出入口を見張るカード室で、公爵は首を切断されていた。怪奇趣味、不可能犯罪、そして密室。カーの著作を彩る魅惑の要素が全て詰まった、探偵小説黄金期の本格派を代表する巨匠の華々して出発点。

 

レビュー

世界初の推理小説は、一般的にはエドガー・アラン・ポーの短編小説「モルグ街の殺人」(1841年)であると言われています。ポーは生前、生まれ故郷であるアメリカでは低い評価を下されていましたが、死後になって、再評価されるようになりました。

本書、『夜歩く』は、エドガー・アラン・ポーが開拓した推理小説の、正統な後継者と言えます。怪奇趣味、死と隣り合わせの恐怖と、そこから醸し出される独特の色気、ヨーロッパへの憧れ、ジャズや酒に象徴される様な、猥雑な雰囲気…どれもポーの作風と共通するものがあります。実際、作中にはエドガー・アラン・ポーに対する賛辞の言葉が登場します。

本書が出版された1930年には、著名なハードボイルド推理作家のダシール・ハメットが、名作『マルタの鷹』を出版していますが、ハメットがアメリカ人が得意とする、暴力的で乾いた作風を押し出した一方、カーは推理小説に、グロテスクでありながら美しい、耽美主義を見出しました。同じ年に全く異なった作風の推理小説が発表されたという事実は、驚きに値します。

本作の文体は格調高い一方、人によっては気取り過ぎていて、鼻に着く部分があると思います。また、いわゆる密室殺人形式の作品の為、探偵が自分の足を使って、縦横無尽に行動する事も、派手なアクションをする事もありません。この辺りが好きになれるか否かで、大きく評価が変わってくる作品だと思います。また、あらゆる作品が氾濫する今日に育った現代人からしてみれば、トリックが分からなくても、「お約束」的なノリで、犯人が誰だかなんとなく見当がついてしまうかもしれません。その為、複雑に入り組んだ推理小説が好きな人にも、本作はお勧めできません。推理小説として楽しむよりも、ゴシック風の雰囲気を楽しむ本として読んだ方が、もしかしたら楽しめるかもしれません。

という訳で、今回のレビューを終えます。何十年も昔に書かれた小説の為、現代人からしてみると、若干違和感を覚える部分があるかもしれませんが、それでも十二分に面白い作品だと思います。是非読んでみて下さい。

 

夜歩く【新訳版】 (創元推理文庫)