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暗闇の中で光る美『刺青・秘密』レビュー

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『刺青・秘密』 著:谷崎潤一郎 刊:新潮社

        発売日:1969/8/5 ジャンル:文学 国:日本

 

内容

究極の美女に土下座し、踏みにじられたい。
谷崎が描くエロティシズムの極み。

肌をさされてもだえる人の姿にいいしれぬ愉悦を感じる刺青師清吉が、年来の宿願であった光輝ある美女の背に蜘蛛を彫りおえた時、今度は……。
性的倒錯の世界を描き、美しいものに征服される喜び、美即ち強きものである作者独自の美の世界が顕わされた処女作「刺青」。作者唯一の告白書にして懺悔録である自伝小説「異端者の悲しみ」ほかに「少年」「秘密」など、初期の短編全七編を収める。
用語、時代背景などについての詳細な注解を付す。

 

レビュー

私は子供の頃から本の虫なので、良く分からない話なのですが、多くの人は子供の頃、よく親から「漫画みたいなくだらないもの読んでないで、もっと活字の本を読みなさい!」みたいな事を言われるらしいですね。

こういう台詞を聞く度に思うのですが、こういう事を言う親って、普段本を読まないんだと思います。だって、もし普段から本を読んでいるんだとしたら、世間では名作として認識されている本にも、倒錯した部分がある事を当然知っている筈ですから。

本作『刺青・秘密』は、谷崎潤一郎の短編集であります。谷崎の本を何か読んだ事がある方は知っていると思いますが、彼はドМの変態です(笑)なので、真面目な人材になりたいと思っている方は、本書を読んではいけません(笑)

絢爛たる文体によって彩られる、性倒錯した暗黒の世界。著者は他にも『陰影礼賛』という本を書いていますが、(ちなみにその本も名著なので、是非読んでみて下さい)その本の中で、彼は「日本人は暗闇の中に美を見出せる民族だ」というような言葉を放っています。

聞いた話によると、今日では日本語の「変態」という言葉は「HENTAI」として、世界中で通じるそうですが、日本人が性倒錯の世界を書くのを得意としている所以も、もしかしたら谷崎が言う様な「暗闇の中にある美」を見出せるが故なのかもしれません。そういう前提条件を踏まえた上で本書を読んでみると、本書から日本文化を知る上での大きな手掛かりを得られると思います。『陰影礼賛』の中で論じてみせた、彼が美に対して持つ哲学を、そのまま自分の作品に活かしている事が、本書を読めば良く理解出来ます。

もちろん、そうした学術的な観点からだけでなく、単純に物語の美しさに酔いしれる事も出来るので、きっと充実した読書体験を得られる筈だと思います。

ちなみに『母を恋うる記』という短編だけは、他の作品とは少々毛色が違っています。こういう優しい作風の作品も、書こうと思えば書ける人だったんですね…。

という訳で、今回のレビューを終えます。とても素晴らしい短編集なので、是非読んでみて下さい。

 

刺青・秘密 (新潮文庫)

刺青・秘密 (新潮文庫)