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全ての物語は神話に通ず 『神話の力』レビュー

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『神話の力』 著:ジョーゼフ・キャンベル・ビル・モイヤーズ 訳:飛田 茂雄
       刊:早川書房 

       発売日:2010/6/24 ジャンル:神話 国:アメリ

内容

世界中の民族がもつ独自の神話体系には共通の主題や題材も多く、私たちの社会の見えない基盤となっている。神話はなんのために生まれ、私たちに何を語ろうというのか?ジョン・レノン暗殺からスター・ウォーズまでを例に現代人の精神の奥底に潜む神話の影響を明らかにし、綿々たる精神の旅の果てに私たちがどのように生きるべきか、という問いにも答えていく。神話学の巨匠の遺作となった驚異と感動の名著。

 

レビュー

本書、『神話の力』は、『千の顔を持つ英雄』という名著を書いた、ジョーゼフ・キャンベルというアメリカの神話学者の遺作であります。

神話学者というと、ものものしい雰囲気を感じるかもしれませんが、本書はインタビューを文字におこしたものである特性がある為、比較的平易な文章で書かれています。なので、彼が書いた他の著作に比べれば、読み易い方だと思うので、彼の著作を他に読んだ事が無い人にも、本書をお勧めできます。まあ、書かれている内容自体は結構難しいのですが。

ジョーゼフ・キャンベルは、ローマ・カトリックの家系出身ですが、ネイティブ・アメリカンの神話と偶然に出会った事で、彼等の神話の虜になります。そしてその時、キリスト教の神話と、ネイティブ・アメリカンの神話に、いくつもの共通点がある事に気付きました。彼はその後、神話に対する興味をますます深め、世界中の神話を研究しだします。

そしていつしかキャンベルは、自分の人生をかけて研究した学問を、大学で教える教授の職に就きます。

スター・ウォーズ』を監督したジョージ・ルーカスは、彼の講義を実際に受けています。彼はそこで、自分の作品に神話の法則を応用したのです。その結果どうなったかは御存知の通り、『スター・ウォーズ』は世界中で大ヒットします。

という経緯があるので、作家や脚本を志している方は、必ず本書を読む必要があります。もし自分が作り出そうとしている作品に神話の法則を当てはめられれば、必ずその作品はヒットするようになると思います。

とはいえ、キャンベルはベストセラー作家や、ハリウッドでがっぽがっぽ儲ける事が出来る脚本家を作り出す為に、本書を始めとする数々の名著を世に発表した訳ではありません。彼は神話を研究する事が、人々の人生をよりよくする事に繋がると考えていたのです。

何故、人々は神話を始め、物語を求めるのでしょうか?食べる事や寝る事と違って、そういった類の事は、別に生きる為に絶対不可欠なものである訳ではありません。しかし、どういう訳だか、人々は物語を求め続けています。いや、物語に飢え続けているといった表現を使う方が、適切でしょうか。

キャンベルは、物語の中に、読者や、もっと言えばその時代に生きる人々が求めるものが隠されていると考えていました。正に、本書のタイトル通り、神話には力があるのです。物語は本の中だけでなく、日々の生活のいたるところにあります。例えば結婚式、成人式、葬式を始めとする、通過儀礼(イニシエーション)の場には、必ず何かしらの物語があります。キャンベルは、神話は聖書や伝承にしか存在しないと述べている訳ではありません。むしろ、ジョン・レノンの暗殺や、『スター・ウォーズ』という大衆文化の中にも物語は存在し、そしてそれらの物語は神話に通じていると主張しています。

人々は、神話無しには生きていけません。しかし、宗教の力が弱まる現代では、それに付随して、神話の力もどんどん弱まっていってしまっています。神話を見失ってしまった人間は、進むべき道を見失い、苦悩するようになります。

では我々はどうすればいいのか?その答えは、「至上の幸福に従え」(Follow your bliss)という、キャンベルが残した言葉に隠されています。自分の人生を貫いている物語…神話の声に耳を傾けて行動すれば、必ずそこに幸福は存在します。そして、自分が幸福になる事が出来れば、他人にも尽くす事が出来る様になります。

本書は神話論を論じている本ですが、その内容の中には、心理学や、人生論、哲学、果ては売れる物語を作り出す方法まで、様々なエッセンスが含まれています。どんな人にとっても、人生のヒントを得られる大変素晴らしい本なので、是非本書を読んでみて下さい。

 

神話の力

神話の力