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民主主義は中年の危機⁉『民主主義の壊れ方:クーデタ・大惨事・テクノロジー』レビュー

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『民主主義の壊れ方:クーデタ・大惨事・テクノロジー』著:デイヴィッド・ランシマン 

                          訳:若林 茂樹  刊:白水社

                          発売日:2020/10/27 

                                                                                         ジャンル:政治 国:アメリ

 

内容

SNSが政治を溶解させた”“民主主義の脅威は、トランプではなく、ザッカーバーグ!”“ヒトラーの1930年代はもう来ない!学ぶべき過去は1890年代アメリカ”“2052年のアメリカ大統領選は、ソーシャルメディア系と中国系の争い!?”―民主主義の壊れ方。

 

レビュー

私は歴史の授業が好きでした。他の授業は大してやる気も無かったので、適当に聞き流していましたが、歴史の授業だけは、小・中・高と、真面目に受けていました。

しかし、どうしても納得できなかった事があるのです。民主主義の扱いです。

戦後すぐ、日本はGHQに占領され、そして大日本帝国の代わりに日本国憲法が敷かれ、民主主義が日本全国に広まりました。めでたしめでたし…こんな感じで、日本史を記した教科書は終わります。(高校の時に受けた日本史の授業は、現代まで続いていましたが)

いやいや、それおかしくない?と、当時の私は思っていました。本当に民主主義は万全のシステムなのか?そんな完璧なシステムがあるのなら、最初から皆その制度を使ってたんじゃないのか?疑問は尽きませんでしたが、遂にその疑問は氷解しませんでした。

もしかしたら、戦後すぐ、あるいは戦後の安定期に生まれた方達は、本当に民主主義は万全のシステムと考えている人の割合の方が多いのかもしれませんが、私のような、いわゆるジェネレーションZ世代の人間で、民主主義が完璧なシステムであると考えている人間の割合は、少ないような気がします。(最も、きちんと統計をとった訳ではないので本当のところは分かりませんが)近年のニュースを見ていると、どうしても民主主義というシステムそのものに、何か大きな欠陥のようなものがあると思えてならないのです。

本書は、そんな私の疑問に答えてくれました。本書を執筆したデイヴィッド・ランシマン氏によると、現代民主主義は現在、中年の危機を向かえているとの事です。運が良ければ、中年の危機は時間の経過と共に過ぎ去り、また健全な社会が到来しますが、運が悪ければ、このまま民主主義はゆっくりと崩壊していくと、ランシマン氏は仰ります。しかし、今のところ民主主義に代わる新しい社会形態の在り方は見つかっていません。その為、我々は少なくともその新しい社会形態が考えだされるまでは、民主主義に頼り続けるしかないのです。

本書は、民主主義を唾棄すべきものとして論じている本ではありません。むしろ、ランシマン氏は、民主主義は優れた社会システムであるとしています。しかし、たとえそうだとしても、民主主義は歪みを引き起こしてまう一面もあると、氏は主張しているのです。

ランシマン氏は、『リヴァイアサン』を執筆したホッブスや、官僚制を主張したマックス・ウェーバーを引き合いに出し、彼等の主張は正しかったと仰ります。民主主義を推し進める事は、官僚制を推し進める事とイコールであり、そして無機質な機械化を推し進める事に繋がるとしています。つまりどういう事かというと、我々現代人は、あくまで「国」という大きな組織を支える「歯車」でしかないと主張しているのです。一個人の存在意義が、そのものが持っているスキルや能力によって決定されているのであるならば、「じゃあ、もういっそ人間なんて使わずに、全部機械に任せちゃえばよくね?そっちの方が安上がりだし」という話に落ち着いてしまうのです。結果として、多くの人間の存在意義が、将来的に消えてなくなってしまうのではないか?とランシマン氏は危惧しています。

また、ランシマン氏は、ドナルド・トランプ氏よりも、フェイスブックを創設したマーク・ザッカーバーグ氏の方が、現代では危険な存在であるとも主張しています。どういう事かというと、トランプ氏は任期が終了すれば、大統領の座を追われますが、マーク・ザッカーバーグ氏は、これからもフェイスブックのCEOであり続けます。だからといって、ランシマン氏は、マーク・ザッカーバーグ氏が悪人であると言いたい訳ではないのです。問題なのは、マーク・ザッカーバーグ氏のようなITの専門家は、善意で民主主義の拡張…もっといえば、社会の官僚制、機械化を推し進めてしまう可能性があるとしているのです。

本書は、民主主義に代わるシステムの在り方を提示している訳でもありませんし、今後社会が具体的にどういったものに変化していくか、という事を論じた本でもありません。ただ、民主主主義を採用している現代社会を淡々と描写しただけなのです。なので、人によっては本書を読んでも、抽象論ばかりで何も得られない、もやもやするだけだと思ってしまうかもしれません。

ですが、結局のところ今後の社会がどうなっていくかは、誰にも分からないと思います。しかし、現代社会がどういう状況に陥っているのか、また、どのように変化してきたのかは、本書を読む事で知る事が出来ます。なので、そういった面から見れば、本書を読む価値は十分にあると思います。是非読んでみて下さい。

 

 

民主主義の壊れ方:クーデタ・大惨事・テクノロジー

民主主義の壊れ方:クーデタ・大惨事・テクノロジー