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日本版アイザック・アシモフ? 『スワロウテイル人工少女販売処』レビュー

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スワロウテイル人工少女販売処 著:籘真 千歳 イラスト:竹岡 美穂  刊:早川書房

発売日:2010/6/30 ジャンル:SF 国:日本

 

 内容

“種のアポトーシス”の蔓延により、関東湾の男女別自治区に隔離された感染者は、人を模して造られた人工妖精と生活している。その一体である揚羽は、死んだ人工妖精の心を読む力を使い、自警団の曽田陽介と共に連続殺人犯“傘持ち”を追っていた。被害者の全員が子宮を持つ男性という不可解な事件は、自治区の存亡を左右する謀略へと進展し、その渦中で揚羽は身に余る決断を迫られる―苛烈なるヒューマノイド共生SF。

 

受賞歴

第10回センス・オブ・ジェンダー賞話題賞

 

レビュー

本作は、人工妖精(フィギュアと読みます)という、ヒューマノイド型のアンドロイドが浸透した、近未来の日本が舞台のSF作品となっています。

私は存じ上げておらなかったのですが、本作の作者である籘真 千歳さんは、電撃文庫というライトノベルのレーベルでデビューを果たした方との事。その為か、本作の作中に登場するキャラクター達は、アニメや漫画に出てくるキャラのように、デフォルメが為されており、非常に親しみやすいです。

しかしそんなキャラクター達に反して、本作の世界観と設定は、本格派のSF小説と比較してもなんら遜色無く(あとがきによると、本作はアイザック・アシモフの諸作品に影響を受けているらしいです)SFに読み慣れた方で無いと、少々とっつきにくい部分を感じるかもしれません。実際、私は大分前に本作を購入したのですが、一度途中で読むのを断念して、今回また最初から本作を読み始めました。しかしそれでも、本作の内容を完全には咀嚼出来なかった印象があります。

その辺が、本作の評価が分かれる部分だと思います。作中に登場する衒学的な要素を、面白いと思えるか、つまらないと思ってしまうかで、評価ががらりと変わってきてしまう作品だと思います。

私個人としては(内容を完全に咀嚼出来なかったと言ってなんですが)とても面白い作品だと思いした。本作は「センス・オブ・ジェンダー賞」という賞を受賞しているらしいですが、その賞の名の通り、本作はジェンダーの問題が大きなテーマとして組み込まれています。しかしそれなのにも関わらず、説教クサさは全く感じませんでした。センシティブな問題を扱っている為、この手のテーマを扱う作品は、往々にて説教クサくなってしまうのが常ですが、本作は娯楽作として徹底されているので、楽しく最後まで読む事が出来ました。

少し作中の世界観をネタバレをしてしまうと、作中の世界では、人間の男女はそれぞれ分かれて暮らし、そして、その代わりに人工妖精が、人間と夫婦になって暮らしています。この設定が妙にリアリティがあるというか…現代社会は晩婚化や未婚化が進んでいますが、その流れが今後さらに加速したらどうなるのか?また、ヒューマノイド型のアンドロの開発や、シンギュラリティが起こったら未来はどうなるのか?意外と本作で描かれている近未来の姿は、単なる絵空事でなく、将来の社会の姿を正確に言い当てているのかもしれません。本作が発表されたのは2010年ですが、この10年間だけでも、良くも悪くもこの世の中は、とんでもない速さで進んでしまっていますし…。もしタイムマシンか何かで、2020年に住んで居る我々が2010年に戻って、東日本大震災と、震災よって引き起こされた原発事故、トランプ大統領の就任や、新型ウイルスが世界中でパンデミックをひきおこした事実を、当時の人間達に教えても、誰もその話を信じたりしないでしょう。そう考えてみると、現代社会は、一昔前の時代に住む人間達が想像していた、SFの世界と大差ないのかもしれません。そんな事を思いながら、私は本作を読んでいました。

という訳で、今回のレビューを終えます。とても面白い作品だったので、是非読んでみて下さい。

 

スワロウテイル人工少女販売処

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