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偉大なるマッチョ・ポルノ! 『ファイト・クラブ』レビュー

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ファイト・クラブ チャック・パラニューク著 池田 真紀子訳 早川書房

 

内容

おれを力いっぱい殴ってくれ、とタイラーは言った。事の始まりはぼくの慢性不眠症だ。ちっぽけな仕事と欲しくもない家具の収集に人生を奪われかけていたからだ。ぼくらはファイト・クラブで体を殴り合い、命の痛みを確かめる。タイラーは社会に倦んだ男たちを集め、全米に広がる組織はやがて巨大な騒乱計画へと驀進する―人が生きることの病いを高らかに哄笑し、アメリカ中を熱狂させた二十世紀最強のカルト・ロマンス。

 

映像化作品

デヴィッド・フィンチャー監督が、1999年に映画化しています。原作よりも、こちらの作品の方が一般的には有名だと思います。あの有名な映画評論家のロジャー・イーバーとは、本作を「マッチョ・ポルノ」と呼称したらしいですが、現在では映画史上に残る傑作として認識されています。

 

レビュー

「痛みを感じろ。苦しみと犠牲が尊いんだ。痛みから逃げるな。人生最高の瞬間を味わえ」本作の登場人物であるタイラー・ダーデンは喀出します。

狂った理論だと思いますか?そう思った人は、どう考えたって本作を楽しめないと思うので、本作を読まない方が良いです。今直ぐブラウザを閉じて下さい。

逆にこの台詞に興味を持った人は、必ず本作を楽しめます。ようこそ、『ファイト・クラブ』へ。

本作の主人公である「僕」は、好きでもない仕事に従事して、好きでも無い物を買い集める日々をおくっていました。「僕」に限らず、現代に生きる社会人は殆どが皆そんな毎日をおくっていると思います。

しかしそんな折、「僕」はタイラーという男に出会いました。とにかく破天荒なタイラーは、まさに「男の中の男」という言葉を擬人化したような人物。次第に、「僕」もタイラーの影響を受けて、彼のように男らしくなっていきます。

かつてフランスの哲学者、バタイユは生涯をかけて「死」と「エロス」という根源的なテーマを追い求めました。バタイユは、理性こそが最も素晴らしいという思想に真っ向から反対します。彼は狂気を賛美し、男性性を賛美し続けました。

バタイユは『眼球譚』『青空』という文学作品も発表していますが、その内容は当時隆盛を極めていたシュルレアリスムに大きな影響を受けている為に、現代人がその内容を咀嚼し、理解するのは一苦労だと思います。その点、本作『ファイト・クラブ』は狂気を知る為の、うってつけの文学作品になると断言します。

男なら本来誰もが抱えている筈の自己破壊願望、破滅願望、暴力衝動、しかし、社会はそれらの願望を認めてはくれません。それどころか、それらの願望に「不健全」というレッテルを貼りつけ、出来る限りそれらの存在を遠ざけようとする。タイラーと「僕」は、その現実に我慢出来ませんでした。だから二人は『ファイト・クラブ』を創設し、そして遂に…おっと、あやうくネタバレしそうになってしまいました。詳しくは、本書を購入して読んでみて下さい。まるで血管にテストステロンを直接注入されたような、ぶっ飛んだ読書体験をもたらす事間違いなしです。

余談…本作の作者であるチャック・パラニューク氏は、本作に対しての的外れな批評を受ける事に辟易としているそうです。彼曰く、本作は現代の『グレート・ギャツビー』のつもりで執筆したらしいですが、ここまで話題作になるとは、本人も全く想定していなかったのでしょう。多分ですが、私のレビューを見せても嫌な顔をして、「あんたの評論はてんで的外れだよ」とかなんとか言いそうな気がします。

しかし氏の容貌はなんというか…言葉を選ばずに言えば、ひ弱そうな容姿なんですね。こんなギンギラギンな作品を書き上げたくらいなんだから、てっきり筋肉ムキムキのマッチョマンなのだとばっかり思っていました。三島由紀夫みたいな感じで…。

 

 

 

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  • 発売日: 2014/03/05
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