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それは奇跡か、それとも幻か 『聖処女』レビュー

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聖処女 監督 ヘンリー・キング 脚本 ジョージ・シートン

公開: アメリカ 1943年12月21日 日本 1949年5月14日

 

受賞歴
アカデミー賞 作品賞 ノミネート
主演女優賞 ジェニファー・ジョーンズ 受賞
助演男優賞 チャールズ・ビックフォード ノミネート
助演女優賞 アン・リヴィア
グラディス・クーパー
監督賞 ヘンリー・キング
脚色賞 ジョージ・シートン
撮影賞(白黒) アーサー・C・ミラー 受賞
劇映画音楽賞 アルフレッド・ニューマン
室内装置賞(白黒) 美術: ジェームズ・バセヴィ、ウィリアム・ダーリング
装置: トーマス・リトル
編集賞 バーバラ・マクリーン ノミネート
録音賞 E・H・ハンセン
20世紀フォックス・スタジオ・サウンド部)
ゴールデングローブ賞作品賞 受賞
女優賞 ジェニファー・ジョーンズ
監督賞 ヘンリー・キング

 

内容

ナポレオン3世第二帝政期フランス、ピレネー山麓の寒村ルルド。ある日、貧しい農夫の娘ベルナデットは、村はずれの洞窟で聖母マリアに出会った。それから祈りを捧げるため熱心に洞窟へ通うベルナデット。しかし村人や家族でさえもその話を信じようとはせず、人心を惑わせた罪で役人に捕らえられてしまう。そんな折、ベルナデットの祈りの場所に泉が湧き上がり、その水が人々の病気を癒すという奇跡が起きる……。

 

レビュー

本作はフランツ・ヴェルフェルという、オーストリアの小説家兼劇作家が書いた小説『ベルナデットの歌』を原作とした映画です。しかし原作の方は1950年に一度邦訳されて、それっきりなようなので、現在(2020年)読むのは困難な本となっています。

本作の主人公であるベルナデット・スビルーは、現実に存在した聖女のようです。なので本作は伝記という事になります。映画では、彼女が聖女になるまでの過程が描かれています。

病弱な少女のベルナデットは或る日、町はずれの洞窟で聖女の姿を目撃します。しかしベルナデットの周囲の人間は、聖女を見たというベルナデットの証言を信じてはくれません。

しかし、ベルナデットが聖女の命令に従って、どんな病気もたちまち治してしまう、不思議な泉を探し当てたあたりから事情が違ってきます。次第にベルナデットは周囲に聖女として認められていき…といった祖筋の映画です。(ちなみに映画に出てくる不思議な泉は、ルルドの泉と呼ばれ、実際に存在し、現在観光地になっているそうです)

この祖筋を読んで、「あーはいはい。キリストとキリスト教徒スゴイって映画ね」と思われる人もいるかもしれません。実際、映画を見る前の私もそう思っていました。しかし、違うのです。映画では、ベルナデットが見た聖女が現実に存在するのか、それとも鬱屈した日常から脱する為に、彼女自身が生み出した幻に過ぎないのか、その解答は提示されません。答えは映画を観た観客の手に委ねられているのです。

映画の冒頭で、「信仰するものにとって、神の説明は不要であり、信仰しないものにとって、神の説明は不可能である」という言葉が画面上に浮かび上がります。作中でもこの言葉を述べる人物が登場します。

結局のところ、縋るものが無ければ、人は生きていけない生き物なのだと思います。主人公のベルナデット自身もそうでしたし、彼女の証言を信じた街の人々もそうでした。ベルナデットの証言を疑う、知識人達も科学に縋っている点は変わりません。

信仰ってなんなのかな?と、本作を見終わった後の自分は考えてしまいました。

現代美術を代表する画家、マーク・ロスコは、現代人の精神的空虚さは、神話の不足に起因していると述べました。これだけ科学技術が発達した現代に、ベルナデットのような人物が登場したとしても、きっと彼女の証言を信じる人も出てくるのでしょう。

という訳で、本作のレビューを終えます。とても面白い作品だったので、是非鑑賞してみて下さい。

 

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