ウゴのレビューサイト

ウゴのブックレビュー

私ウゴが、読んだ本と、たまに映画と音楽の紹介をします。

砂の上の植物群 レビュー

f:id:Beelzebul:20201211141311j:plain

吉行 淳之介著 新潮文庫

発売日:1963年 ジャンル:文学(第三の新人) 国:日本

 

内容

中年の化粧品セールスマン伊木一郎が、偶然知り合った18歳の津上明子に求めるもの、明子に頼まれて誘惑する姉京子に求めるもの、そして妻の江美子に求めるものも、心ではなくただ女体であった。疚しさとも歪んだ心持ちとも無関係な、常識を破るショッキングな肉体の触れ合いの中に、真の性的充足を探り、性の根源にメスを入れた野心的長編。姉妹編を成す『樹々は緑か』を併録。

 

映像化作品

1964年に映画化されているようです。

 

レビュー

私は本を読む事以外にも、音楽を聴くのも趣味です。なのでたまに音楽関係の本を読んだりもします。

吉行淳之介の名前を知ったのは、大学の図書館に置いてあった音楽関係の本を読んだ時でした。(なんて名前の本なのかは忘れました)その本を書いた著者は、大学時代にキング・クリムゾンやELO等のプログレッシブ・ロックに嵌っていたそうですが、その理由が、三島由紀夫吉行淳之介の作品の様な文学性を感じられるから、との事でした。

吉行淳之介って誰?」と当時の私は思いました。三島由紀夫は言わずもがな日本を代表する作家であり、私は当時から既に彼の本を読んでいましたが、吉行淳之介の事は作品どころか名前すら知らなかったのです。

学校の帰り、読書家を自称している自分のプライドが傷つけられたような感覚を覚えた私は、BOOK・OFFによって吉行淳之介の本を探し出して買いました。そして家に帰って読んだみたところ…。

まあ、こんな作風の作家ならそりゃ知らなくても仕方ないよな(笑)という感想を真っ先に抱きました。上記に書いた内容の部分を読んでもらえば分かりますが、その内容はかなり際どいものなのです。高校の時の国語の教科書には、日本を代表する作家のリストが乗っていましたが、その中にも吉行淳之介の名前はありませんでした。教育者の立場からしたら、間違っても高校生にこんな作風の本を読ませる訳にはいかないでしょう(笑)懸命な判断だと思います。

そもそも、『第三の新人』という名前でジャンル分けされている事自体、当時の文壇からはどこか下に見られていたような評価を下されていた様な印象を受けます。現在では再評価も為されているようですが。

吉行淳之介自身も、そのような評価を下されている事に対して大した反感は覚えなかったようですね。そもそも権威付けされる事そのものを嫌っていた人なのでしょう。

そして肝心の本作のレビューですが、私は本作を『オイディプス王』や『ハムレット』『スター・ウォーズ』と同様の、父親殺しの物語の系譜にあると読み解きました。しかし主人公はその復讐の刃を、父親本人、又は父親の代替となる存在へは向けません。彼が刃を向けるのは、力の弱い存在…もっと言えば自分よりも一回りも二回りも若い妙齢の女性に対してです。

少し脱線しますが、以前にこんな話を聞いた事があります。最近、駅のホームや横断歩道等で、4、50代くらいの男性が、わざと若い女性にぶつかってくる事件が多発しているらしいです。自分は男なのでそんな事をされた事もないし、仮にされたとしたらその場でキレると思いますが、傾向として女性は男に比べると大人しい人が多い様な気がします。その為、そんな嫌がらせみたいな事をされても黙ってしまう人もいるのでしょうね。

もっと言えば、痴漢なんかも未だにいるのでしょう。しかしそういう行為を働く人間というのは、別に性欲が人並み外れて強い訳でも無く、自分がどれだけ力を持っているか誇示する為に、わざとそのような犯罪行為に手を染めるらしいです。

なんか良く分からないし、分かりたくも無い心理状態ですがともかく、本作はそのように力の弱い女性に対して暴力表現にうって出る中年の男の心理を、美的に書いてみせた作品だと思います。実際、主人公の親友ポジションに位置する男(!)は、過去に痴漢行為をしていた経験があるらしいです。

はっきり言ってしまうと、ミソジニー的な色を感じさせる作品ですので、好き嫌いがかなりはっきり分かれる気がします。(というか私が取り上げてる作品の殆どが、好き嫌いがはっきり分かれる作品の様な気がしますが…)まあしかし、散々ディスってきてなんですが、私は本作を楽しく読ませて頂きました(笑)本作はあまり人に勧められるような作品では無いので、大声では言えませんが。インターネット上にレビュー書いてこんな事言うのもなんだと思いますが…。

作中、主人公は学校の制服を着た女性に対するフェティシズムを感じている様な描写が出てきます。(三十歳越えて妻子もいるくせにどうしようもねーなこいつ、と思う反面、その気持ちも理解出来てしまうのがなんかムカつきます)そのフェティシズムは、まさに力の弱い存在に対する加虐趣味そのものを婉曲に表現しているのではないでしょうか。

という訳で、本作のレビューを終えます。色々とアレな本作ですが、本…というよりアートそのものは、本来毒があればあるほど面白いものです。一度読んでみるのも良いのではないでしょうか?本作を気に入るかどうかは分かりませんが…。まあ、私の書いたレビューを見て、面白そうだと思えれば読んでみてもいいと思います。

 

 

砂の上の植物群(新潮文庫)

砂の上の植物群(新潮文庫)