アンディ・ウィアー著 小野田和子訳 ハヤカワ文庫刊
出版日:2014/8/25 ジャンル:SF 国:アメリカ
受賞歴
ジョン・W・キャンベル新人賞
第46回星雲賞海外長編部門
『SFが読みたい! 2015年版』ベストSF2014海外篇1位
内容
有人火星探査が開始されて3度目のミッションは、猛烈な砂嵐によりわずか6日目にして中止を余儀なくされた。だが、不運はそれだけで終わらない。火星を離脱する寸前、折れたアンテナがクルーのマーク・ワトニーを直撃、彼は砂嵐のなかへと姿を消した。ところが―。奇跡的にマークは生きていた!?不毛の赤い惑星に一人残された彼は限られた物資、自らの知識を駆使して生き延びていく。宇宙開発新時代の傑作ハードSF。
映像化作品
2015年に『オデッセイ』というタイトルで、映画化されています。こちらの映画も数々の賞を受賞するなど、評価が高いです。
レビュー
本作『火星の人』は、元々はウェブ上で発表された小説らしいです。そのウェブ小説が自費出版され、その後再び出版社から再出版されました。そしてその後さらにハリウッドで映画化されました。ウェブ小説が最終的に映画化するなんて、正にアメリカンドリームですね。
ストーリーは、火星に置き去りにされた宇宙飛行士が、何とかして地球に帰ろうと奮闘するというもの。この祖筋だけ聞くとかなりハードな作品の様に思えると思います。実際、本作には傑作ハードSFという煽り文句が書かれています。
しかし実際のところ、本作の主人公はかなり精神的にタフで、軽口を叩く余裕もあります。テレビドラマを見たり、ディスコミュージックを聴いたりもします。その為あまり危機感は感じられません。
本作は一応SFという事にはなっていますが、宇宙人も出てこなければ、超能力の類も出てきません。主人公とその仲間が火星を訪れた理由も、単なる友人火星探査ですし、良く言えばリアル、悪く言えば地味な印象を受ける作品だと思います。そのあたりを是とするか否するかで、評価が大きく変わってくる作品だと思います。
個人的にはもうちょっとドラマチックな出来事が起こって欲しかたかな。勿論エンターテイメント作品なので、事件が起こったりもしますが、上記に書いた通り主人公がかなり精神的にタフで、ついでに言えばちょっとオタクっぽい奴なので、イマイチ緊張感が無くて、感情移入出来なかったです。出てくるジョークも下ネタ関係が多かったりするのもなんかね…って感じでした。
本作を面白いと思える人は、本格派のリアルSF小説が好きな人だと思います。私はそこまでSFに興味が無いので(の割にはSF小説をレビューしている事が多いような気がしますが…)あまりのめり込む事が出来ませんでした。
しかし刺さる人には刺さる作品だと思いますし、かなり評価の高い作品ではあるので、一読してみる価値は十二分にあると思います。是非読んでみて下さい。