ウゴのレビューサイト

ウゴのブックレビュー

私ウゴが、読んだ本と、たまに映画と音楽の紹介をします。

ハーモニー レビュー

f:id:Beelzebul:20201206222503j:plain

ハーモニー 伊藤計劃著 早川書房

 

内容

21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰にただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。第30回日本SF大賞受賞、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門受賞作。

 

映像化作品

2015年にアニメ映画化されています。

 

レビュー

私が一番最初に読んだ伊藤計劃先生の本は、『虐殺器官』でした。真っ黒な表紙に、題名がデカデカと漢字で書かれているのがカッコよくて、表紙買いしたのです。

そして読んでみて、「これは面白い!」となり、続いて本作『ハーモニー』を、『虐殺器官』を購入した書店でまた買いました。

個人的には『虐殺器官』よりもこちらの『ハーモニー』の方が好きです。伊藤計劃先生自身が体験した生の感情が、よりリアリティを持って襲い掛かって来る感じがするのです。

舞台は近未来の社会、その社会では病気にかかる事も突発的に死ぬ事も殆ど無くなり、皆幸せに暮らしています。大体この手の作品では、実はユートピアに見える社会はディストピアであり、たまたまその世界の秘密を知ってしまった主人公は権力者達と戦う決意をして云々…みたいな、『1984年』の様なストーリー展開が繰り広げられるのが常です。

しかし今作は他の凡庸なSF小説とは一線を画しています。本作の世界観は、本当にユートピアなのです。ですが主人公とその友達のミァハ(変な名前ですね。というか本作に登場するキャラクターは皆変な名前ですが。ドラゴンボールに出てくるキャラクターと良い勝負でしょう)はそれが我慢できません。

完全なる調和がとれた世界…しかし何故、主人公はその世界に満足出来ないのか?少しネタバレになってしまいますが、ミァハにはその世界を憎む尤もらしい理由があります。しかし、主人公にはありません。少なくとも、作中では明らかになりません。それなのに何故、主人公は世界を壊そうとするのか?

それは多分、主人公が抱く破滅を望む気持ちが、人一倍強かったが故なのでしょう。あえて言うなら『理由なき反抗』といったところでしょうか?

破滅を望む感情…いや、衝動は普段は抑圧されていますが、それは人間が感じる衝動の中でも最も純粋で力強く、厄介で悍ましく、そして美しいものなのだと思います。伊藤計劃先生もそう思っていたのでしょう。それなのに現代人は、出来る限り破滅を自分の側から遠ざけようとする。伊藤計劃先生にはそれが我慢出来なかったに違いありません。

本とは本当に素晴らしい媒体だと思います。本来であれば、人は皆他人の心の内を覗く事が出来ません。しかし本を読んでいる間だけは、他人のインナーワールドに足を踏み入れる事が出来る。他人の心に没入して、それぞれが独自に作り上げた世界観を堪能する事が出来る。

そして、自分と似たような思想を持つ人物が、この世界のどこかにいる、或いはいた。と知った時は、本当に嬉しいものです。

本当に素晴らしい作品ですので、ぜひ手に取って読んでみて下さい。

 

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 

ハーモニー

ハーモニー

  • 発売日: 2017/04/22
  • メディア: Prime Video