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わが心臓の痛み レビュー

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わが心臓の痛み マイクル・コナリー著 古沢 嘉通訳 扶桑社出版

 

内容

連続殺人犯担当だったFBI捜査官テリー・マッケイレブ。心筋症を患っていた彼は心臓移植を受け、早期引退していた。病院から退院した彼のもとにある女性が現れる。その女性グラシエラによると、いまマッケイレブの胸のなかで動いている心臓はコンビニ強盗に遭遇して絶命した彼女の妹グロリアのものだという…。因縁の糸に導かれ、事件の解決にのめり込んでいくマッケイレブが到達した真相とは?『ナイトホークス』でのデビュー以来、ミステリーの最前線を疾走するコナリーが、テーマ、プロット、キャラクター…それらすべてに趣向をつくして、現代ハードボイルドのさらなる可能性を拓いた意欲作。

 

映像化作品

ブラッド・ワークというタイトルで、クリント・イーストウッドが映画化しています。私は先にこの映画を見て、原作を購入しました。中々面白いです。評論家からの評価はイマイチらしいですが。

 

レビュー

派手なアクションシーンがある訳でも無ければ、息を呑むような怒涛のストーリー展開が続く訳でも無い。主人公のマッケイレブは、現代ハードボイルド物にありがちな、現実にくたびれた中年というパッとしない造形。少々地味な作品なのは否定のしようがありません。

しかし、この作品には比類ない輝きがあります。『殺された女の心臓を移植された主人公』この設定が、物語に深い陰影を生じさせ、ハードボイルド作品でありながら女性性に由来する強いセクシャリティを感じさせるのです。

息をする度に、心臓が鼓動をうつ度に、主人公は殺された女性の存在を意識します。犯人が被害者を殺したお陰で、主人公は今を生きられている。だが主人公は強い正義感を持つゆえに、犯人の存在を許せません。そして、犯人もまた、強い正義感を持つ主人公に魅了されている…このアイロニー。三人の関係が複雑に絡み合い、グロテスクでありながら美しい幾何学模様を作り出します。

シンプルでありながら、黒いユーモアと悲劇性を伴った設定を作り出し、それを上手く物語の中で活用するマイクル・コナリーの手腕には、ただただ脱帽する限りです。ストーリーを衒学的な方向に持っていかずに、娯楽作として徹しているのも評価ポイントと言えるでしょう。

ハードボイルド作品でありながら過剰なマチズモに傾倒し過ぎていない稀有な作品です。その独特な世界観を、是非堪能してみて下さい。

 

わが心臓の痛み〈上〉 (扶桑社ミステリー)
 

 

 

わが心臓の痛み〈下〉 (扶桑社ミステリー)
 

 

 

ブラッド・ワーク [Blu-ray]

ブラッド・ワーク [Blu-ray]

  • 発売日: 2012/07/11
  • メディア: Blu-ray