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蘭の肉体 レビュー

蘭の肉体 ハドリー・チェイス著 井上一夫訳

 

内容 

母からは美貌と富を、父からは恐るべき殺人狂の血を受け継いだキャロル・ブランディッシは、嵐の夜、精神病院から脱出した。美女を追うギャングと殺し屋たちのまんじともえの争奪戦に血と銃声の雨が降る。空前の大ベストセラーとなったデビュー作「ミス・ブランディッシの蘭」の好評に気をよくして、ハードボイルドの巨匠が贈る、皆殺しの歌!

背表紙から引用

 

映像化作品…フランス・イタリア・西ドイツ合作で、1974年に映画化されているらしいです。ですが日本ではVHSしか発売されて無い為、現在では視聴困難な作品となっています。

 

レビュー

 煽情的な表紙からも明らかなように、この本のジャンルはエロティック・スリラーとなっています。20世紀に発売された、イギリス製のB級パルプ・マガジンと紹介してしまえばそれまでなのですが、個人的にかなり好きな作品なので今回ここに取り上げました。

 この本の主人公である女の子は作者の前作にあたる、『ミス・ブランディッシの蘭』に登場する頭のおかしい殺人狂の男と、そのサイコ野郎に犯された幸の薄いヒロインとの間に生まれた子供になっています。という訳で一応『ミス・ブランディッシの蘭』の続編となっているのですが、物語上の関連性は無いので、前作を読んでいなくても全く問題ないと思います。分かり易く例えるなら『ジョジョの奇妙な冒険』みたいなものですかね?もっとも彼女に流れている血は誇り高い血統ではありませんが…(笑)

 この作品の最も面白い部分は、主人公が事件に巻き込まれる『巻き込まれ方スリラー』の体をとっておきながら、事件に巻き込まれている当の本人が作中で最もイカレてるという点にあります。しかし主人公が男ではなく女の子である事から分かるように、一見すると主人公は弱弱しく、母親譲りの幸の薄い悲劇のヒロインです。しかし、時節父親譲りの衝動的な攻撃性を発揮するのです。その攻撃性が吉とでるか凶とでるかは…ネタバレになるので伏せておきます。

 かなり古い作品ですが、現代人から見ても非常に面白い作品だと思います。前述した通り、主人公の性格設定が素晴らしい!現代のジャパニースカルチャーを代表するアニメや漫画に登場するようなヒロイン像を、20世紀に考えだしたのは本当にスゴイと思います。今風の言い方をすれば、『ヤンデレ』なんですよね、この主人公。しかし第二次世界大戦真っ只中の1942年に発表された作品の為、世界観は非情にシビアで、荒廃しています。ハードボイルドの世界観にどっぷり浸かりたい方にはもってこいの作品です。

 

 


 

 

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蘭の肉体 (創元推理文庫 133-2)

蘭の肉体 (創元推理文庫 133-2)